映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「終の信託」

無実の人が自供するという恐ろしい実態が明るみになった遠隔操作ウイルスに感染したパソコン所有者の誤認逮捕事件。

検察が無期懲役有罪を撤回し、”謝罪なき敗北宣言”といわれた東電社員殺害事件。

検察を巡る不祥事が続くなか、この映画を観ると、これら不祥事も”さも、ありなん”と思えてしまう。

映画の後半部分は、尊厳死を望む患者に対して措置をした医師(草刈民代)と、検事(大沢たかお)の対決。

検事側のシナリオどおりに、取調べは進み、供述調書に署名させられ、いきなり逮捕状がつきつけられる過程には、鳥肌が立った。
自白の強要、密室内の危険性が手にとるようにわかる。
それが作り物でなく本物に見えるのは、徹底した取材と優れた脚本に負うところが大きいのだろう。
さらに検事役を演じる大沢たかおの理性的かつ高圧的な迫真の演技に圧倒される。
こんな検事に素人が勝てるわけがない。

身勝手な不倫相手(浅野忠信)、周囲の事情を考え抜いて尊厳死を選ぶ患者(役所広司)、この二人の男を受け止め、悩む医師をめぐるドラマだけに留まらずに、強烈なメッセージを残す。

監督・脚本は、ちっぽけな痴漢冤罪事件を真正面から描いた「それでもボクはやってない」の周防正行
この監督の眼は、極めて的確だ。