映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「127時間」

この映画の予告編あるいは広告により観客は”実話”の映画化と知らされている。
主人公は閉じ込められても「127時間」後に救出されることが、はじめからわかっている。
だから映画観客の興味は、どうやって救出されたのか?ということにつきる。

大自然の峡谷に、たったひとり残されて。
それだけで1本の映画ができるのか・・・、とおもうが、”実話”で”たったひとり”の映画といえば、
小型ヨットで太平洋横断に成功した堀江謙一を描いた「太平洋ひとりぼっち」がある。市川崑監督は主人公の孤独に耐える姿を印象的に描いていた。

他にも、世界初の大西洋横断無着陸飛行のリンドバーグを描いた「翼よ! あれが巴里の灯だ」もあった。
コックピットに迷いこんだ蝿や、もらった鏡などの小道具の扱い方がうまく、長い操縦室の場面も飽きさせない工夫がたっぷり。さすがビリー・ワイルダー監督作品と唸らせた。

さて、映画「127時間」の主人公は、休みのたびにロック・クライミングに興じる青年。
ひとりよがりで、自分のことは何でも自分できると思っている。
行き先は誰にも伝えていないので、峡谷に閉じ込められても、助けは来ない。
水はない、時間はない、孤独と焦りのなか、思うのは家族、友人、恋人や仕事仲間。
ひとりで生きているのではない、ということを思い知らされる。
それ以上に青年の生きることへの執着がすさまじい、それが感動をよぶ。
あきらめない!
なにか現在日本へのメッセージのようだ。

狭い空間からだからわかる空の美しさ、光のありがたさ、自由に羽ばたく鳥、蟻の命など映像美とともに、自然賛歌ももりこんで、まったく飽きさせない。
最後には主人公のモデルとなった本人が登場して、大自然を謳い、なるほど一級の山岳映画でもあったのだと気づかせてくれた。