映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

百田尚樹著「至高の音楽 クラシック 永遠の名曲」

購入したレコード・CDが2万枚を超えるという小説家百田尚樹が薦めるクラシック名曲についてのエッセイを読んだ。
内容は深く、鋭く、面白く読んだ。

1回目はエッセイ本として普通に読み、2回目は私の所有するCDで全曲を聞きながら熟読した。
曲への理解が増し、新たな発見が多かった。
(紹介されている26曲の中で私がCDを持っていない3曲は、YouTubeで聴いた。)
なお、”名曲の聴きどころ”を抜粋したCDが本の付録についているが、各曲3分程度であり、名曲の真髄を知るには全曲を聴くことをお勧めする。

この本には、映画で効果的に使われたクラシック音楽についても言及がある。
デビッド・リーン監督「逢びき」
F・コッポラ監督「地獄の黙示録
スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ
といった映画ファン誰もが知っている名曲についても書かれているが、それだけではない。

ミロス・フォアマン監督「アマデウス」のエンディング・タイトルバックに流れる「ピアノ協奏曲20番」が、”モーツアルトの鎮魂歌のよう”と評している。

ビリー・ワイルダー監督の「七年目の浮気」では、男が女に、ラフマニノフ作曲「ピアノ協奏曲第2番」を聴かせれば女は必ずうっとりするという妄想と現実描写に、監督がこの曲に”禁断の果実的甘さ、性的な香り・・その匂いを嗅ぎとった”と分析する。

手塚治虫監督のアニメ映画「展覧会の絵」の第4曲「ビドロ」の場面への言及ぶりには驚いた。
この映画は1966年の製作だから百田尚樹は10歳のはずだが、観ているのだ。
私は大学生時代にこの映画をリアルタイムで観て感激、ムソルグスキーの曲にも感激し、すぐレコードを買いに走ったものだ。
学生時代はお金がなくて高価なレコードを買うのには勇気と決断が必要だった。

あらゆる演奏のCDを簡単に安く買え、インターネットで無料で聴けるという現代。
著者が「あとがき」で書いた最後の一行に、同感。

”一枚のレコードを、大切な宝物のように聴いた青春時代が今は無性に懐かしく思います”