映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「悪人」

映画には、独身の男女4人が登場する。

職業は、
・保険会社勤務のOL
・紳士服量販店勤務の女性
・裕福な男子大学生
・解体作業員の男

人間を職業や外見で判断してはならないはずなのだが、
新聞には氏名と共に書かれる職業名。
”悪人は誰か?”と、問われて、世間はどの職業に眼が向くか。

この映画は、「本心」と「世間の眼」の間で揺れ動く人間の性を鋭く抉る本年屈指の日本映画だ。

<以下ネタバレ注意>
殺人犯は、最後まで殺人者らしく殺人未遂の振る舞いを、
殺人犯を連れまわした悪女は、あくまで被害者として生きて、
殺人犯の祖母は、世間に謝罪するまで帰らぬマスコミに対して土下座し、
被害者の父親は、不幸な娘に今日も事故現場に花をたむける。

それぞれが、最後は「不本意な」行動となっていく怖さ。

もとより、殺人犯は女を深く愛するが故に警官隊の前であえて殺人未遂という「不本意な」行動に出たのであり、それが観る者に衝撃を与える。

生きることの悲しさ、怖さ、時代の閉塞感を見事に活写した感動作。
映画は時代を映す鏡。

ここに登場する役者たちは全員の名前を書かねばならないほど、ひとりひとりの演技が光っていた(なので名前は省略した)。

李相日監督、吉田修一共同脚本。
原作はこれから読むつもり。