映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ」


世の中、ダメ男から離れられない女がいる。

 

そんな男と女を描いた日本映画といえば、成瀬巳喜男監督の「浮雲」(昭和30年)がある。

男のダメぶりを森雅之が、女の業を高峰秀子が見事に演じてみせた戦後日本映画の傑作を思い出す。
役者の演技で見せる映画の代表作でもあった。

 

”ダメ男なのに何故いい女がそばにいるのか”、
”何故女はそこまで男に尽くすのか”、
これを役者が自然に演じ、監督が映像として描ききるのは至難の業だがー。

 

この映画「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ」では、ダメ男を浅野忠信が、尽くす女を松たか子が、見事に演じた。
これが見どころで、この映画の魅力となっている。

松たか子は、映画では代表作が少ないが、この映画で、「隠し剣 鬼の爪」、「K-20 怪人二十面相・伝」を超える、まさに代表作となったのではないか。

 

ふたりの演技を引き出したのは、根岸吉太郎監督の手腕。
そして田中陽造の脚本に負うところも大きい。
さすがベテラン脚本家で、日活ロマンポルノなどで男と女の裏面をするどく描いてきた実績が、せりふや人物関係に円熟した味わいを醸しだしていた。

 

また、脇を固める役者もすばらしく、特に広末涼子は、まるで大正ロマン竹久夢二の女の雰囲気で独特の味わいをだしていた。