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<ブログ18年目です>

「一応の推定」

第13回(2006年)松本清張賞受賞作である 広川純著の小説「一応の推定」(文芸春秋社。06.6.10刊)を読んだ。

クリスマスの日、JRの駅で轢死した男性。
事故なのか、それとも自殺なのか。
彼には愛しい孫娘がいて、莫大な海外での手術費用が必要だった。
死の三ヶ月前に加入していた傷害保険金の請求を巡り保険会社から調査を依頼された定年間近い保険調査員の調査が始まる。

着実にこつこつと足で調べる執念の調査ぶりが本書の読みどころ。

「警察が建前で答える言葉なんか、調査員は頭っから信じていないんです。その裏に隠されているニュアンスを嗅ぐために警察調査をするんですよ。」
「保険調査というのは、警察とは違った目線から見なければならないのです。」
など、調査会社に勤務していた著者の経験がいきた会話が多く、なるほどこれがプロの仕事かと思わせる。

ただ、お話は”個人でここまでやるか”という展開。
だが、サスペンス小説として一気に読ませる。

題名の「一応の推定」とは、自殺と判断するにあたっての保険理論だそうだ。
ハリソン・フォード主演の映画で有名となった「推定無罪」(90年)。判決が出るまでは被告人を無罪として扱うという意味の「推定」無罪(疑わしきは罰せず)とは異なる概念。
サスペンス書である「一応の推定」という本書の題名も、うまい。