映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「秀吉の枷」

加藤廣の小説「秀吉の枷」(上下巻。日本経済新聞社。)を読んだ。

前作「信長の棺」の続編である。

歴史ミステリーとして一気に読ませ、実に面白い本だ。

前作では、「信長の遺骸はどこにいったのか」という歴史の謎を解き明かす新解釈が興味をそそり、楽しめた。
桶狭間の戦いの真相や明智光秀に謀反をそそのかした人物、本能寺に仕掛けられた謎などは、新作でも踏襲されている。
今回は秀吉の視点から描かれている。

読みどころは、天下人となった秀吉の心の動きを追ったところ。
「秀吉がはめられた”枷”とは何か」「なぜ自分の子でもない秀頼を最も大切に扱ったのか」の二つのテーマが、読み応え十分である。

著者は、東大を卒業し中小企業金融公庫に就職したが、ある時期になると旧大蔵省官僚の天下りポスト上司に苦労したという。

その時代の経験が歴史上の人物造形に生かされているように思う。
著者は、75歳になる直前にデビュー作「信長の棺」を発刊し、新人の歴史小説では異例のベストセラーとなった。
NHKBS2「週刊ブックレビュー」に、著者がゲスト出演したときに語っていたが、最初書き上げた原稿は原稿用紙5000枚分という。
あらすじが固まってからは、今度は数年かけて小説の書き方を勉強したうえで、伝記作家牛一の視点で書き直して750枚にまとめたという。

信長、秀吉ときて、次回3作目は光秀とのこと。

私は、「本能寺の変に黒幕はいたのか?」に興味がある。

次回作も大いに期待したい。