4月の歌舞伎座は、六世中村歌右衛門五年祭追善公演。
故人ゆかりの演目をそろえる。六世歌右衛門は、女形一筋に生き、華麗で情艶な芸風で昭和の歌舞伎界の第一人者。
その追善の「口上」がある夜の部を観に行ってきた。
「口上」は、役者の素顔が見えて、役者と観客が一体となるので楽しい。
他の演劇にはみられない歌舞伎独特のもの。
今回の口上は、最長老の又五郎をはじめ雀右衛門、芝翫、富十郎、藤十郎、菊五郎の人間国宝をはじめ幹部がずらりと揃って、華やかな舞台。
左團次は、故人から二度と麻雀に招かれなくなったエピソードで笑わせ、各人がそれぞれ故人の想いでを語る。偉大な故人を偲び、引き継ぐ者が決意を示す。
歌舞伎が師から弟子へと伝統芸能が受け継がれていることがよくわかる。
一方わが国の映画界は、かつての5社映画会社による製作システムが崩壊し、いまや作品ごとに資金を募り、スタッフを集めて製作するというプロジェクト製作システムが主流。これでは技術の伝承は心もとない。
歌舞伎の世界がうらやましい。
追善口上のあと、松江襲名と玉太郎初舞台の口上があった。
これ以上丁寧な日本語はないという口上せりふ。これがまたいい。
「ひとかどの俳優になられますよう、御ひいき、御(おん)取立てのほど、隅から隅まで、ズーイーと、希(こいねが)い上げ奉ります。」
よ!成駒屋!
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