映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「銀齢の果て」

筒井康隆の爆笑小説「銀齢の果て」(新潮社。06.1.20刊)を読んだ。

93年に高校国語教科書掲載をめぐるてんかん差別問題で一時断筆宣言した著者の老人差別を痛烈に批判した問題作である。老人版「バトル・ロワイヤル」で、一気に読ませる。



表紙は、登場人物の老人戦士たち。バックは銀。表紙を手に取った読者の顔を写す鏡の効果で、あなたも戦士の一員ですよと問いかける。

題名は、登場人物の白髪を頂いた冠雪に例えた著者の造語。そしてまた谷口千吉監督の映画「銀嶺の果て」(47年)の題名のパロディ。この映画は、谷口千吉黒澤明の共同脚本で、3人の銀行強盗が北アルプス山中に逃げ込み雪山を舞台にした山岳アクション・サスペンスの傑作。三船敏郎の強烈デビュー作で、黒澤明は翌年「酔いどれ天使」に起用し、以後コンビを組む記念碑的な作品。なお音楽の伊福部昭の代表作のひとつでもある。

著者や登場人物の老人たちが、戦後間もない昭和22年の中学生か高校生時代に観て、強烈な印象を得た映画に違いない。



この本には映画のギャグが効果的に使われている。トニー・ザイラー主演の「白銀は招くよ」(59年)、「サンセット大通り」(50年)のシュトロンハイム、壮絶なラスト「俺たちに明日はない」(67年)、黒澤明監督の老人映画「生きる」の主題歌「ゴンドラの唄」など。これら爆笑ものである。読んでのお楽しみ。