映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

「ゼロの焦点」


私が高校時代にリアルタイムで観た野村芳太郎監督の映画「ゼロの焦点」は、強く印象に残っている。


橋本忍山田洋次と共同)脚本による過去が交錯する巧みな語り口、そしてなによりも川又繡 のカメラが、暗い過去を象徴するかのような北陸の空、能登の断崖を見事に捉えてモノクロ・ワイド画面に緊張感を与えた映像に感動した。

これぞ日本映画黄金期のプロの仕事だった。

 

48年前に1度だけ観た映画で、ストーリーはすっかり忘れていたので、新作の犬童一心監督「ゼロの焦点」もミステリーとして楽しむことができた。

 

物語の舞台は、昭和32年。
なぜ、今「ゼロの焦点」なのか。
それは、「松本清張生誕100年記念作品」だから。清張が描きたかった心を映画化するのが、記念作品にふさわしい。
当時の社会状況が事件の背景となり、犯行動機が過去の暗い社会状況だったことをモチーフとした”社会派”清張ワールド。
だから、この映画は、昭和32年にこだわる。

その当時を映像で再現するのに、助監督以下スタッフの苦労は大変だっただろう。

 

松本清張を讃える意義ある再映画化だが、映画の出来は前作には及ばない。