映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

瀬戸内寂聴著「秘花」

”花とは一口にいえば何なのでしょうと訊いた時に、
「色気だ。惚れさせる魅力だ」
とお答えになった。
「幽玄」とは、とつづけて問うと、
「洗練された心と、品のある色気」
と答えられた。”

             
室町時代能楽師世阿弥(ぜあみ)が、「風姿花伝」奥儀で、「この芸は心より心に伝う花なれば」と書いている。

能が観客の想像力とともに、心に訴えかける芸であると。



85歳になった瀬戸内寂聴が、その世阿弥の生涯を描いた本「秘花」(新潮社刊。07.5.15) を読んだ。



72歳で理由もなく佐渡へ配流された世阿弥が、どのように老いに直面し、死を迎えたのか。



著者自身の晩年について考えるようになった体験を通して描く。

「エロスのない芸術なんてありえない。」という著者がだぶって写る。

老いと能の奥儀を考えさせられる、感動の本。